Korg Gadget Ver2.0 での曲作り(作曲)の方法。音楽理論を知らないなりに頑張った記録
はじめに
私生活でいざこざがあり、不安な気分を振り払おうと挑んだのが6曲目「Dangerous Trip」だ。
Korg GadgetがVer2.0になって最初に作った曲になる。
作曲に用いたツールに、Triton Selectが仲間入り
作成に用いた道具はiPad Proである。
今回から、追加プラグイン”Korg Module”が加わった。Moduleの追加音源”Triton Select”を導入したのでTritonサウンドを活用している。
Korg Gadgetのプラグインは”M1”以外すべてアンロックした。
仕事後すぐに作業を開始
「作曲をして遊ぶことが、今日は良い日だったと思えるカギになる」という考えでいた。
集中力を出して、日々の苦しいことをすべて忘れてしまおうといったノリ。
リスナーのイメージは自分
7時間後に曲は出来上がった。今回は好き勝手にやらせていただいた。音楽を作っていく過程で意識しなければならないのは「聴く相手、誰に聴かせたいか」という部分だけれど、そこを無視した。
タイトルは「Dangerous Trip」
暇なら一度、聴いてみて欲しい。聴いてから以下の文章を読んでいくと、2度おいしくて楽しめるだろう。
個性的な曲になっているのでそこのところはあしからず。
Korg Gadgetの情報は少ないイメージがあるので作曲方法とイメージを書いていく。タイトル横の(0:00)はそのシーンがいつであるか示している。
何かの参考になれば嬉しい。
悩んだことや壁と感じたこと
メロディーをつくれない
僕は音楽は中学校以来学んでいない。もう34歳だ。20年前の知識を掘り起こすのには大変苦労する。
だから、楽譜は読めない。
「和音」というものは何であるかと、文字で説明することができない。
なので、キレイなメロディーをつくれない。
ベースラインの組み立てがわからない
僕はベースに味のある曲が好きだ。125hzあたりまでの音が大好きで、表現したいと強く思う。
けれど、どういったバランスでどういうタイミングで鳴らすといいとか、具体的なことを理解できていない。
曲の変わり目や、ブレイクを作るのが苦手
ブレイクとは”演奏を一時的に停止した空白部分”これは曲にメリハリを付けるには、分かりやすくて効果的な方法である。
しかし、ブレイクは「ここだ」というタイミングを作りだしてはじめてできる。
曲の起伏を変える部分がはっきりするとリスナーは落ちつく、なのでブレイクを使ったり、いろいろとする必要がある。
僕は曲の起伏となる部分を作るのが苦手だ。いつも「どうやって変えようかな」と考えて「Clapの連打でいっか」と、実に単純に決めてしまう。
音作りはできない
よくシンセで「ADSR」という言葉を聞く。これは
- Attack Time
- Decay Time
- Sustain Time
- Release Time
と呼ばれるもので、4つのパラメータを変化させれば、音を多様に変えることができる。 シンセいじりの基本中の基本といえる。 僕はこの行為に時間を費やすのが嫌いだ。理由は、よく理解していないからだ。 テンプレートで用意されている音色を生かした曲作りをしている。 だから個性的な音は出せない。
コンプレッサーとイコライザを使えない
Korg GadgetはVersion2.0で各ガジェット別に「コンプ」と「EQ」を使えるようになった。
しかし、僕は勉強不足で、どういった変化が期待できるのか、いつ使うのかが分からない。というかエフェクターのほとんどは知らない。
シンプル・ミュージックとiPad
不明点が少ないがゆえにシンプルに作れる
このように基本的なことを学んでいないので、謎はまだ少ない。
しかし、限られた表現方法から作りだす音楽なので、シンプルな表現が可能だとおもう。
「シンプル」は「単調」と置き換えてもいいだろう。
制限された表現と、iPad Proというデバイスだけで作られたシンプルな音楽
製作環境(DAW)は、iPadのKorg Gadgetなので「サイドチェイン」等の複雑な処理はできない。サウンドインターフェイスさえ無いから、細かい音は聞きとれてないかもしれない。
タッチパネルによる入力は、ベロシティは常にMaxだ。
という風に、Korg Gadget for iPadという”枠”によって、曲が暴れないようにできている。とても良いことだ。
で、できた曲はこれなんですけどね。シンプルとはいいがたい。
Korg Gadgetを用いた作曲(Dangerous Trip)のイメージ:序
序盤は音探しから
最初のイメージでは「未来的な音」を求めていろいろなシンセのプリセット音源を探していた。
僕の探す「未来的な音」は全然見つからない。曲作りは早くも問題に直面した。
原点回帰してPCM音源から音を探す
一度頭をリセットした。
対象はPCM音源のみとし、Marseilleから探すことにした。
プリセット名は忘れたけれど、比較的扱いやすい音がみつかったのでクオンタイズを効かせて鳴らしてみる。
パーカッション的な音色もあって、合わせやすそうだ。
それが最初の音になった。
PCM音源限定で探しているのは、アナログシンセサイザーの音色を表現するのは難しいからだ。僕は苦手としている。
テンポはKorg Gadgetをタップして手動で決めた。
疾走感が欲しかったので、少し速めになっている。
最初の音とテンポが決まるとスムースにいく
最初の1トラックが決まると、後はもう努力や不安とか我慢そういったものは必要ない。
努力するのは最初の音とテンポを決めるまでである。僕は昨日の日曜日を、作曲へのインスピレーション探しに使った。苦悩したものだ。
それでも曲に手を付けられなかった。
コンパクトに曲をまとめる
はじめの音をならしたら、すぐに次の音を足す。同じように次々と足していく。
急ぐようにやらなければ、曲は冗長なものとなってしまい。輝きが減ってしまうだろう。
それに、長い曲は聴いてもらえない可能性がある。
そういったことから、僕は次々と音を足したり変化させている。
2番めの音はベースの練習
Korg ModuleのなかにWoodBassの音源があった。適当に合わせてみる。2番めに持ってきたのは「ごまかしが効かない状態」に鳴らしたかったから。
ベースの上達は僕にとっては優先順位の高い目標だ。生音っぽい音が2つ鳴ったことによって、やわらかい曲調になった。
キックは早めに出す(0:14)
「キックをいつ入れるか」ということは悩ましい問題だ。僕は考えないことにした。あまり考えずにキックを入れる。
早めにキックを入れると自然な感じに仕上がる。
逆に遅めにもってくると「キックを入れるタイミング」は難しくなる。
なのでカンタンなほうを選んだ。
僕の好きなキックの音色はTokyoだ。今回の曲にLondonの出番はない。
ボコーダーサウンドはTriton(0:16)
序盤の雰囲気を決定付ける音になるボコーダーサウンドはTritonから。
和音で鳴らすことで、たくさんの声が聞こえるようになっている。
和音の作成はKorg Gadget純正のアルペジエーターから行った。4和音である。
ワンショットにAmsterdamを(0:04)
豊富なワンショットが揃っているAmsterdamから、雰囲気にあった音をつくっている。
周期的に聞こえるケモノの声のような音がそうだ。
鳴らしすぎると曲のバランスが壊れるので、注意して使っている。リズム感を付けると曲によく馴染む。
騒がしいサイレンサウンドとチープな銃撃音で、ただならぬ雰囲気をつくる(0:30)
突然鳴りだすサイレンのような音はTritonの音源を使っている。
8ビットサウンドの銃撃音はKingstonだ。リアリティを求めるのは無理がある。けれど最低限の工夫ということでPanで音を左右に広げた。
ガンサウンドはクオンタイズをつけてリアルタイム録音した。
クオンタイズを付けなくてもよかったけれど、結果的に「曲としての輪郭のある音」になったのでよかった。
そのあとにWolfsburgの音で悲壮感を出した。重くのしかかるイメージ。
Korg Gadgetを用いた作曲(Dangerous Trip)のイメージ:破
中盤のイメージは「原住民と武装ゲリラ」
ここまでの流れは先住民に会って、いきなり銃撃される。という流れだ。
なので音の入り方は強引だし、展開も早い。
けれど、具体的なイメージに近く演出できているので問題はない。不自然なタイミングはあえてそうやっている。
時間がかかった「原住民が復讐する」という流れ(0:49)
このあたりの表現に時間がかかった。
ボコーダーの音を怒りのイメージで高いレベルで鳴らす。というところまではいい。
しかし肝心な部分である「復讐」「決起」といったムードを表現することができない。
メロディーを創る技術はないので、最初に決めたメロディーをいろいろなガジェットで鳴らして、さらに音域を変化させたりして、音を分厚くすることで表現した。
そのあとにブレイクを入れて、ソロでボコーダーと8ビットガンサウンドを鳴らす。
「ぶっ放してるぜー!」という表現。
目覚めから宴会へ。落ち着いた雰囲気を表現。キックは4つ打ちをずらす(1:41)
戦いは終わった。静かな空間に鳴る高い音はWolfsburgのものだ。光りをイメージしている。眠りから覚めるといったところ。
キックで気分の昂ぶりを表現し、メイントラックを鳴らして曲の雰囲気を保つ。
戦いは終わって、宴会のシーンへ変わるという場面だ。
勝利や敗北、正義や悪といった要素は表現されていない。
このシーンの切り替えもスイッチが切り替わるかのように急に変化する。
シーンの切り替わりは「ランダムかつシンプルに変化させることに統一」させて曲全体のバランスを出した。
ボコーダーが元気よく鳴っている。スネアやハットのような音を勢いよく鳴らしてお祭りの雰囲気を出す。音源はAbu Dhabiだ。
メインに流れるメロディーはWolfsburgの音。ヘンテコなメロディーで異文化的な表現を狙っている。
同じような展開が続くので飽きないようにキックを微妙に変えてある。微妙にずらした4つ打ちにしたのは、異文化な雰囲気を際立たせたかったから。
宴会は終わり次なる展開へ(2:02)
フェードアウトしていくボコーダーで「終わり」を表現した。
後は音を最小限に削っていく。ボコーダーのみフェードアウト効果を付けて、他の音は止めた。
このときのキックは足並みを表現している。
宴会中は踊っているので4つ打ち、宴は終わったので音を抜き「ゆっくりしている」といった効果をもたせた。
2分を超えたあたりになる。
Korg Gadgetを用いた作曲(Dangerous Trip)のイメージ:急
音楽は自ら走りはじめる。イメージは抽象的なものへ(2:13)
宴会は終わって「さあ次の展開はどうしよう」となった。
間もなく感じたものは「音と音の出会いから生まれる予想できない展開」だった。
しかし、あらすじはなかったわけではない。
宴会は終わって「夜道を歩く」という表現をしている。低く響くベースが夜を演出する。つまり「冒険」が向かう先にある。
新たな出会いと試練(2:20)
夜になったかと思いきや、曲中にすっとフェードインしてくるキャッチーな音。このやさしい音色は、冒険の案内役として登場させた。ガジェットはKievを使用している。
けれど、実は裏切りものという別の顔をもっていて、最後には裏切る予定になっている。
やさしい音色と冒険へ出発するのだが、いきなり銃撃にあう(2:39)
やさしい音色とは離れ離れになってしまった。
この時のガンサウンドはKingstonではなくTokyoの音だ。ガンサウンドの背景に鳴る爆発音のような音はKingstonのもの。
慌てる様子がキックによって表現されている。
目的地に着いた。お宝でもみつけたのだろうか。重厚で壮大なイメージを表現(3:06)
銃撃によって窮地に立たされていたのを救ったのは、戻ってきたやさしい音色だった。銃撃のリズムを怪しげな音色でかき消してしまう。そしてお宝を発見する。
曲にいろいろな音を加えて重厚な雰囲気を演出していく。
ベースをどうするか悩んだけれど、メロディーをつくる技術はない。
なので、Brusselsの音源を使っている。音色が合わせやすく、パラメータのPERFORMERを使えば気持よい音の変化が楽しめる。
中心となる和音の美しい音はHelsinkiだ。
メイントラックの変化・リバーブをかける(3:27)
メイントラックが「音を変化させてくれ」と主張してきた。いまの音じゃダメらしい。
なのですべての音を止めて、カンタンなリズム音とシンセソロにした。
このあたりはその場の雰囲気に合わせてアレンジしている。
アレンジするにも、初めて扱うガジェットだ。どういう変化をつけられるのか検討もつかない。
ツマミをいじりながら、リバーブを強めにかけて、続けて音質を下げた。
生音のような音がビリビリしたノイズ系の音へ変わった。
曲の終わりは「崩壊する」というイメージ(3:58)
そして全ての音を鳴らす。特にメイントラックは際立つこともない。自然になじんでいる。裏切るはずだった「やさしい音色」は作成途中で表現できなくなったので。あまり出番はなかった。
そのまま「崩壊するイメージ」で曲を終わらせていく。ベースや音圧を出すだけに使われていた音を約20%までフェードアウト。
神秘的な雰囲気を主張していた和音(Helsinki)はノイズ値を上下させて不安定という布石とした。ホワイトノイズが聴こえるのはこのためだ。
そしてパンを左右に振って一気にフェードアウト。
終曲(4:18)
この時点で残り3つのシンセが鳴っている。Marseille、Kiev、Wolfsburgだ。
まずKievを音に変化をつけながらフェードアウトしていく。
最後はMarseille(メイントラック)と音階が全くおなじのWolfsburgが残る。
メイントラックの音質を元に戻し(リバーブはあえて残した)WolfsburgをModulation Matrixを使って音を歪ませ、ゆらゆらした効果を与えて音を止める。
最後は銃撃(またかw)されて、終わる。
おわりに
以上で解説は終了になる。
音楽理論が分からないから、専門用語の全然出てこない解説になった。逆に読みやすくていいと思う。
ただ「もう少し曲調をポップにできなかったかね」と我ながら思う。
展開はやたら早いし、まあちょっと挑戦した一曲だった。
作曲前に抱いていた不安な気分は、曲にすべて吸収された。